カレー好きな彼と調理人の憂鬱
「カレーが食べたい」
従順な調理人はすぐさま材料を揃え、彼のためにカレーを作る。
しばらくは満足だった彼だが、今度は
「いつでもすぐにカレーが食べたい」
と言う。
従順で賢い調理人はいつでもすぐにカレーが食べれるよう、彼に簡単カレーキットを用意する。
面倒くさがり彼でも、いつもでカレーが食べることができた。
しばらくして、カレーに飽きた彼は突然シチューが食べたくなって、カレーキットを使ってシチューを作ろうとし、うまくシチューができないことに文句を言う。
見兼ねた調理人は、カレーもシチューも簡単にできるキットを彼に与える。
そのときの気分でカレーもシチューも簡単に作れるキットに満足をしていたが、そのうちに日替わりで他のメニューも食べたい気持ちが芽生えてきた。
彼の果てしないわがままに困った調理人は、とある科学者のもとへ相談に行く。
「彼がカレーが食べたいと言い始めたときに時を戻すから、日替わりで何でも簡単に作れるキットを彼に提供しなさい」
と科学者は言い、その名案に乗った調理人は何でも簡単に作れるキットを手に時を遡る。
「カレーが食べたい」
先を見越した調理人は日替わりで何でも簡単に作れるキットを彼に渡す。
「使い方がわからない」
と彼は嘆く。
星新一的妄想の水曜日。